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学校での救急処置について~養護教諭の役割~

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お医者さんだってわからないんだから

けがの救急処置
 
こんなことを思ったことはありませんか?
「お医者さんだって、X線撮影をしないと骨折かどうかはわからないのに、養護教諭が保健室で見ただけでわかるわけないやん」

私は何回かありました。
「ボールに指が当たった」「教室の中を歩いていたら、手が机の端に当たった」「鬼ごっこで走っていて、こけたときに手をついた」

児童は泣くわけでも痛そうな表情をするわけでもなく淡々として「痛い」と言う。けがをしたという部分も腫れているわけでも青くなっているわけでもない。だから「少し様子を見ようか」と経過観察してそのまま帰宅した。もちろん、担任に連絡して、担任は保護者に連絡している。

次の日や数日後、子どもが親に「痛い」と言い続けるので、保護者が病院に連れて行くと骨折していた。

「えっ」と驚いて息をのむ。
周りの教師たちは気の毒そうにこちらを見る。そして、校長に校長室に呼び出され「どういうことだったのか?」と説明を求められる。保護者が学校に何か言ってきている様子はないのに。


校長に説教をされるのではないけど、後味悪く嫌な気持ちになるのは否めない。

「だって、骨折の兆候なんてないやん。確かに児童は『痛い』とは言ってたけど、ひどく痛そうじゃないし・・・。『長引く痛み』なんて、時間が経過せなわからへんやん」


だから、自信をもって職務ができるように、学校事故における救急処置について調べてみました。

学校における救急処置について養護教諭の役割を知る意義

 学校では、校長や教頭を含め養護教諭以外の人は、医療や保健、福祉についてほとんど知りません。ですから、養護教諭の判断や見立てについて理解してくださる人はいないと言っていいでしょう。そんな中で自分の判断や見立てに自信を持って仕事を進めようと思うと、自分に揺るがない軸を持っている必要があります。その軸を形成するのが根拠です。
 見出しにも書いていますが、あくまで「救急処置についての養護教諭の役割」です。救急処置は養護教諭一人がするものではありません。でも、養護教諭が担う部分もあるのです。そこを整理して理解すると自信を持って仕事ができるようになります。
 それでは、一つ一つ見ていきましょう。

学校における救急処置

学校における救急処置の目的 
 学校における救急処置の目的は、突発的な傷病の発生に対して適切な処置を行うことにより、児童生徒の生命を守り、傷病の悪化や二次災害を防止することによって、心身の安全・安心を確保し円滑な教育活動が行えるようにすることである。

Lica
救急処置は養護教諭だけがするんじゃないからね。

学校における救急処置の特徴
 学校は、教育機関であって医療機関ではないので、学校における救急処置は正規の救急処置が行われるまでの応急的なものである。

Lica
「応急的なもの」が難しいんだよね。

学校における救急処置の範囲

  1. 医療機関へ搬送するまでの処置
    • 救命処置(ただちに処置をとらないと生命が危険に陥る場合の処置)
      AEDを含む心肺蘇生(気道の確保、人工呼吸、胸骨圧迫心臓マッサージ)、止血、ショック体位にするなど。
    • 二次障害や重症化の恐れのある場合の処置
      けいれん、呼吸困難(ぜんそく発作など)に対する処置等
    • 保護者への引き渡し、または医療機関へ受診するまでの処置
      骨折、捻挫部位の固定・アイシング、熱傷に対する冷却、体調不良時の安静、搬送等。
  2. 一般の軽微な傷病の処置
    • 擦り傷、切り傷、軽度の打撲・捻挫等
    • 軽度の腹痛、頭痛、倦怠感等

応急手当は、誰でもできる行為である

 養護教諭の行う応急手当については、キーストーン法律事務所 弁護士 菅原哲朗氏が次のように述べておられます。

<参考> https://www.keystone-law.jp/yougokiji01.pdf

 養護教諭の行う救急処置は傷害や病気の応急手当であって、患者を治療する医療行為ではなく、医師法第17条に規定する「医業」ではありません。もちろん、養護教諭は学習と経験から看護師と同程度の医学知識を有しますが、厚生労働省の国家資格である看護師などの医療専門家ではありません。しかし、救急処置・応急手当の法的根拠は、民法第698条「緊急事務管理」です。応急手当は、医師による速やかな対応を得ることが困難で、緊急でやむを得ない場合になされる処置であり、合法的に誰でもできる行為なのです
 重要なのは、救急処置はあくまでも医師への引き継ぎを目的としますので、応急手当にとどめ、119番通報と病院への搬送がポイントで、必ず医師の診察を受けさせることです。

 上の文章は『養護教諭がかかわる裁判や判例」の中の文章であり、「連載第9回 教職員によるエピペン注射と医師法について」の中で述べられたものです。ですから、必ず医師の診察を受けるように強く書かれているのは、エピペンの注射をした後のことです。エピペンの注射ではない軽微な傷病の応急手当後では必ずしも119番、病院への搬送が必要であるとは限りませんので、良き判断をお願いいたします。

 菅原哲朗先生の養護教諭の職務に関する法的な説明は、とてもわかりやすくて自分の仕事の法的な意味がわかります。その結果、毎日の職務の見方が変わり、仕事がしやすくなると思います。
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まとめ

 養護教諭の行う救急処置は、学校が医療機関ではなく教育機関であることから、医師や看護師が行う救急処置とは違って、医師に引き継ぐまでの応急手当だということが明らかになりました。そして、救急処置・応急手当の法的根拠は、民法第698条「緊急事務管理」であり、児童生徒と生活を共にする教職員は誰もが身につけておかなければならない技術だと言えます。
 そこで、養護教諭の専門性はどこにあるかと言えば、学校で事故や災害が起きたときに迅速かつ円滑(スムーズ)に応急手当ができ、救急要請をし、他の児童生徒の避難、適切な行動が取れるように救急体制を整えることかと思います。そのためには、養護教諭自身の児童生徒のアセスメント、適切な応急手当ができるようにしておくことは言うまでもありません。

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